どん底だった。
もう誰も頼れなかった。
「自分の力で生きていかなければならない。」
27歳の頃、僕はそう思い、起業を目指した。
パソコンが苦手だった僕は、本を買ってきてプログラミングやデザインを勉強した。
パソコンが苦手だったのに、ホームページをつくったり、PHPで会員登録システムなどをつくったりして、
思うように動かせるたびにほんとにうれしかった。
家庭教師や運転代行のバイトをして生計をたてながら僕は必死にパソコンを勉強した。
パソコンの勉強や自分のサイトづくりを進めながら、ときにはホームページや名刺、パンフレットなどの仕事を依頼されて格闘する日々が続いた。
それだけでなく、パソコンや受験勉強を教える教材をつくったり、実際に教えたりもした。
そのとなりにはいつも自分の憧れのサイトがあった。
差は歴然だった。
父親はいつも僕に就職するように言った。
夢にもえていた自分は、就職などする気はなかった。
もうそんな時代じゃないと思ったし、いまさら就職しても遅いと思った。
あるとき、プログラマーの書くコードをみて自分との差をみせつけられた。
僕は、プログラマーへの道をあきらめ、ネットビジネスに舵をきるようになった。
なかなか成果が出せずに、バイトばかりになる時期もあった。
僕はいつか成功したいと思っていたが、いくつになっても成功できないかもしれないと思うと発狂しそうになり、そうならないようにまたやるしかなかった。
ネットでの起業は金銭面でのリスクはない。
しかし、時間的なリスクがある。
5年やっても10年やっても、全く成果が出ない可能性もある。
僕は焦りを感じたし、あきらめようとする自分をいつも鼓舞して、
自分を奮い立たせてたたかった。
個人事業主として働くと、毎年、年金や健康保険、税金などの請求書が届く。
せっかくお金をためていても20万円の請求が何度も届く。過去に払っていない年金も払わないといけなかった。
歳をとると厚生年金や退職金をかけていないことに不安を覚えるようになった。
そして続けているアルバイトも、自分が歳をとるにつれて仕事がへっていく焦りを感じた。
どうせ、アルバイトで時間をとられるのであればと正社員として働きながら好きなことをしようと思いはじめた。
今まで築いたキャリアもないので、苦労した。
そんな中、知り合いが話をつないでくれて、正社員として働けることになった。
正直、自分がやりたい仕事ではないかもしれない。
でもしっかりした社会保険とそれなりの給料をもらえる。
なによりもありがたいのは副業も自由にしていいと言ってもらえたことだ。
社長がやさしく余計なプレッシャーがないのもいいし、難しい仕事ではないので働く時間と好きなことをする時間を両方確保できる。
僕はここで正社員として働きながら、それ以外の時間で自分の事業づくりをがんばる決意をした。
新しいことをはじめると簡単な仕事でも気疲れがすごい。
またこれまでのように好きなことにたくさんの時間をかけることもできない。
でも、生活が今までよりも安定したことで、心が少し安定するようになった。
僕は少しでも時間をみつけて、事業づくりに取り組んでいきたいと思う。
昔の僕は起業して、華々しい成功を夢見ていたが、能力のない僕にとってはなかなか難しかった。
今思うと、僕の場合は最初からこんなふうに正社員として働きながら、自分の事業づくりをすればよかったのかもしれない。
今よりも若ければ、もしかしたら好きなプログラミングの業界に身をおけたかもしれない。
でも今は今で、僕は今の仕事をありがたいと思っている。
もしも今、昔の僕と同じような境遇の人がいれば就職しながら起業する方法も考えてもらえたらと思う。
もちろん能力があって起業して、それだけでうまくいく人もいるとは思うので、その場合はいいが。
僕はそれをできなかったが、決してあきらめることなく、今からもう一度、夢をおってやっていきたい。
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